月の見たモノ

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八丈島4

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八丈島2日目。子供たちは最終便で帰るのでホテルをチェックアウトして玄ちゃんの畑を見にいくことに。
家に行くとそこには働く姿の玄ちゃんが待っていてくれた。

初めて見る玄ちゃんのメガネ姿。「うわぁ・・・メガネなんて大人みたい」「東京にいたら目が悪くなっちゃって・・・」

庭先にはロベの葉が収穫してあって、これは島の人の収入源になっている。バラなどの花束の添え物として使うこの葉っぱは島のあちこちに畑があって玄ちゃんもこれも収入の一部にしているらしい。
「内職みたいなものだけど、東京の内職ってボールペン1本組み立てて0.5円とかでしょう?島のロベは最低でも10円にはなる」へぇ~・・・すごいね。そう言って目の前にあるロベを見るとこれはもう・・・相当な金額だ!驚き!

玄ちゃんの運転する軽トラックの荷台に子供たちが乗り込み、私は助手席に。ガタガタ道を通って畑に向かう。
「島はどうですか?」大人みたいに玄ちゃんが私に話しかける。
「フフフ・・・最高だよ。あの頃と同じようにここに暮らしたいよ。みんな変わらずにいてくれて嬉しい・・・。もっともっと島に来ればよかったなって後悔してるよ」
「そうだよ。ヒロちゃん、どうしてもっと来てくれなかったの?」あっという間に以前の子供の頃みたいに戻った玄ちゃんの話し方にホッとしながら
「これからはもっと来るよ。玄ちゃんもいるしね」
「そうだよ。もっと来ればいいよ」

到着した玄ちゃんの畑は、原生林だった森を開拓して作ったもの。最初から平らな畑だったわけじゃないので、それはそれは苦労して作った畑だ。

「あの木なんかどかすのが大変さ・・・」そう指差す先に転がった大きな大きな木。
「あのままでいいの?」主人が驚いて聞く。
「畑の邪魔にはならないよ」玄ちゃんの大らかさが気持ち良かった。

私たちが島を出た後で植えたという河津桜が今見頃を迎えていて、畑の横で春を知らせる。
「素敵だねぇ・・・。気持ちいい・・・」

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玄ちゃんの明日葉畑のところには、小さな湧水があったり、その周りにはセリやクレソンが自生していたりして、島にいる時にもそこには遊びに行ったりした。今の季節はたくさんの月桃が赤い実を付けていて美しい。この場所でたき火を楽しんだり、温かいミルクティーを飲んだりしたのは本当に素敵な思い出。

島の見どころや観光案内を見れば、やっぱりワクワクするけれど、本当に素敵だと思うのはいつも同じ。島の人の暮らしだ。島の人の暮らし方、島の人の生き方が本当に素敵で感動する。

東京でたき火をすれば消防車が来る。そんな生活が本当に「不自由」だと思う。たき火の点け方も知らない自分を情けないと思う。ここで教えてもらった事が私の中の宝物。

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子供たちは畑の上の方で何やら楽しげな笑い声を響かせている。見るとパッションフルーツを拾っているようだ。

島のパッションは本当に香りが良くて、グラスにパッションをかき出して入れたら砂糖と水を入れてジュースにする。こんなシンプルで贅沢なジュースをよく飲ませてもらった。

「全部拾っちゃおう」手提げ袋いっぱいにパッションを拾って、今度は玄ちゃんの牛を見に行く事に。

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私が島に居た頃、プリンを作るから・・・グラタンを作るから・・・と、よく牛乳を分けてもらった。この牛乳が本当に美味しくて、ゴクンと飲み終えた後にくる甘さが断然違うのだ。プリンもグラタンもミルクゼリーも、この牛乳で作って見違えるように美味しくできた。時々思い出しては「島の牛乳が欲しい・・・」と嘆いている。

玄ちゃんのおじいちゃんがちょうど帰ってきて「お茶でも飲んでって」と声を掛けてくれた。
このおじいちゃんこそ、私の心から尊敬する人なのだ。

神様のような人。本当にすごい人なのだ。

八丈島の明日葉の紹介をする時、テレビなどでもよく拝見するお顔なのでご存知の方もいるかもしれない。

「そろそろ年だから、畑も小さくしようかな・・・と思っていた所に孫が帰ってくる、農業がやりたいって言うからね、こりゃ頑張らなくちゃ・・・って。ここから3年は孫の為に頑張るつもりです。人間らしく生きたいって孫に言われたら、応援するしかないものね。応援したいものね」

大きな大きな愛情を見た想いがして、私の鼻の奥がツーンとした。

「明日葉のね、新芽の柔らかいところはそのまま。外側の固い葉っぱは加工用。根っこは漢方薬になり、種も売れる。そして大切なのが牛の堆肥。牛は牛乳を出してくれるし、フンは堆肥になる。島の生活はね、上手にリサイクルされてる。そういうことに手を掛けるのを止めちゃダメなの。自分で作って自分で食べる。買う事ばかり覚えては、震災の時どうする?島は船が来なくなれば何も届かないのだから。自分たちで食べるくらいの野菜は自分たちで作る。それが島でならできるの」

おじいちゃんの話はすべて頷けることばかり。人が人らしく生きることを当たり前のようにしている人だ。

そしておばあちゃんは黙ってたくあんを切って出してくれた。
すかさずおじいちゃんが褒める。
「これ、これがおいしいんだ。食べて。この人の作るこれがおいしいんだよ。みんなにわけてあげるから、うちでは毎年2000本のたくあんを作るの。みんなが喜んでくれるから」

2000本ものたくあんを・・・・おばあちゃんの苦労って大変なものだ。それも売るんじゃない。配ってあげるのだ。すごいっ・・・。

そしておじいちゃんが褒めるだけあって本当においしい。

「また来なさいよ。泊まる所はあるから。この家以外にまだ2つ家があるから。いつでもいらっしゃい。ホテルなんか予約しないでここにいらっしゃいよ」

おじいちゃんはやっぱり神様だ。何も求めない。こちらに対して何一つ求めず、ただただ与えてくれる。ただ「いらっしゃい」と言う。

島の人の心ってこういうのがとても強い。流人の島だったせいなのか、外から来る人に島の人は優しい。何も見返りを求めずに「この島は素晴らしい」ということに誇りをもっている。

見返りを求めず「私がした事を、今度はあなたが他の人にしてください」という心だけを繋げて行く。これはおじいちゃんに限らず、島の人の心の元にある美しいものだ。

私が好きなおじいちゃんの名言がある。
「食べないと死ぬぞっ!」牛飼いのおじいちゃんらしい名言。牛は食べなくなると死ぬ。人も同じ。
「なんでも人に差し出して、どうぞどうぞと出しているうちに、気がつけば自分の元に返ってきてる」

島に生きるおじいちゃんの生きた言葉。本当に素晴らしいなと思う。

おばあちゃんが草餅とたくあんとたくさんの明日葉を包んでくれた。

ふと足元を見ると猫がいる。「みーちゃん」とおばあちゃんが呼んでいた。人懐っこいのか、みーちゃんは私に向かって歩いてくる。よしよし・・・みーちゃんを撫でて帰ってきた。

後でそのみーちゃんが、亡くなった陶芸の先生の猫だと知る。私の大好きだった先生の猫が今おばあちゃんに可愛がられている。たくさんの縁がつながるところ。引き取るという人が来たのに、おじいちゃんから離れなかったそうだ。


やっぱりここは神様のいる天国。きっと先生も笑って私たちを見下ろしているんだろうな。

子供たちは満足して、帰りの支度をする。石積ケ鼻、洞輪沢港、そしてまた大切な人のいる場所へと向かった。
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by syu1212h | 2013-02-23 06:47 | 八丈島