月の見たモノ

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八丈島3

長い長い4時間にも及ぶ式典が終わって、後片付けする人、あいさつに回る人、色んな人の中で私は主人と子供たちを眺めた。

あんなに小さかった子供たちが、立派になってまたここで会っている。
この島で過ごした2年間はたった2年間だったけど、私たちの島の暮らしは今でも心の中で続いているのだ。

たった5人の教室。息子が転校生としてこのクラスに入った時、女の子4人と男の子1人。
ずっと男の子一人だったクラスに突然やって来た息子に対して、目を輝かせて言ってくれた一言。
「ねぇ、友達になろう」そう言ってくれたんのがさおちゃんの末っ子ゲンちゃんだ。
あの頃と同じように息子と友だちでいてくれる。

大人になるうちに、照れたり、忘れたり、二人の関係はいつも太かったわけじゃない。だけどこうして島で会えばあの頃と同じようにひっくり返って笑い、いつも一緒だったみたいにすぐに元に戻るのだ。

「明日は俺の畑を案内するから、見においでよ」そのお誘いは何よりも嬉しかった。島に帰ってきて農業をする彼は「僕は人間らしく生きたい」と島に戻ってきたのだ。

そんな言葉を聞くと、羨ましい気持ちになる。東京の暮らしにだってきちんと人らしい生活がある。だけど人が多過ぎてストレスを抱えるのも本当なのだ。

人を相手にする仕事は難しい。自分をコントロールして、いつの間にか自分じゃないみたいな顔をしている時がある。本当の自分と、本当の自分じゃない自分を抱える生活。東京の生活ならそれが当然のように強いられるけれど、自然を相手にしたらそれはきっと「人間らしくないな・・・」と感じるのも当然だろう。

私は東京にも人との繋がりや、本心で笑い合うことや、人を思いやる心だってちゃんとある事を理解しているけれど「ま、いっか・・・」と思う時に見上げる空が、八丈島のような青い空だったり、耳を澄ませてみたときに聞こえるのが潮騒だったりしたら・・・もっともっと心は柔らかくなるのになぁ・・・と思ったりする。

自然の中にいると木々の揺れる音や、風の匂いは、驚くほどパワーをくれる。科学的にどんなものがあるのかはわからないけれど、ただ歩いているだけで、ただ海を見てたたずむだけで、体が喜んでいるのがわかる。
そういう事が東京の暮らしの中で、すぐにできないってことが「不自由だな・・・」と思う。

もうすぐ夕日の時間。子供たちは冷たい北風の中で、あの頃と全く同じようにボールを投げて笑い合う。

あの頃と違うのは、それぞれが携帯電話を出してアドレスの交換をしたり、写真を赤外線で送ったり・・・。そして後姿はもう立派な大人にしか見えないことだ。

「次回は夏祭りね!」そう言って手を振って別れる子供たち。どうやら夏祭りでまた集まるつもりらしい。

末吉の夏祭りはとっても楽しくて、盆踊りではなく、フォークダンスを踊るのだ。生バンドで、マイムマイムを踊る。キャンプの夜みたいに賑やかで、焼きそばやヤギ肉の焼いたのが振る舞われてその手伝いも楽しいものだった。以前ユーチューブでも話題になっていたけど「高速、マイムマイム」と言われるほど、スピードアップして踊るそのマイムマイムはゲラゲラ笑ってしまうほど楽しいものだった。

小学校を後にして、ホテル「満天望」にチェックインした後、また末吉の温泉「みはらしの湯」へ出掛けた。

受付を見ると、さっきも会ったばかりのみつこおばがいた。
「あ!みつこおばっ!また会えたぁ~♪」と、喜ぶと「あっ!ヒロちゃんっ!来た来た・・・」と、両手をこちらに伸ばした。

靴をしまうのももどかしく、カウンター越しにみつこおばの手を握り「よかった~♪また会えた~♪」と、喜ぶと
「食事会はお風呂当番だったから出れなかったんだよ・・・・」と、残念そうに言った後
「だけど、ヒロちゃんお風呂に来るかな~って待ってたんだよぉ。今日はおばがおごる!ヒロちゃん来るかなぁ~って思ったから無料券バックに入れて来たんだからっ!」

イソイソとバックを取りに行くおばの背中に「今日は~、閉校式典に出席した人は~、無料ってことになってるぅ・・・」と、島の人が説明した。

はっ・・・と、振り返ったみつこおばの残念そうな顔が可笑しくて
「また来るから。その時はおごってもらうから(笑)取っておいて。またすーぐ来るから」
うんうん・・・と、頷いて、また気を取り直したおばは「ヒロちゃ~ん・・・嬉しいよぉ~・・・」と、私の手を握る。

一緒に受け付けてで働く男性が「島に居たんですか?何年前ですか?」と、主人に話しかける。
「もう12~3年になりますね。2000年頃ですから」
「うわぁ・・・そんなになる?そっかぁ・・・」おばの手は私の手を握って離さない。

「じゃ、ちょっと風呂入ってくるからさ。また後でね」
「あったまっておいで」

名残惜しそうに手を離して、私は久しぶりの温泉を満喫した。
愛娘まーちゃんと一緒に「やっぱりこのお風呂は最高」と、露天風呂から太平洋を眺める。

何度もこのお風呂からこの景色を眺めた。あの頃はすぐに帰れない東京を想って寂しい気持ちの日もあった。でも今はすぐに来れないこの場所を愛しく思うばかりだ。

ドアが開く音がして、ふと見るとみつこおばが覗きに来た。
「ヒロちゃ~ん・・・この風呂は初めてか?」
「やだよぉ・・・。私が住んでる時からあったから何度も来てるよ~(笑)」
「そっか、そっか(笑)」
「ねぇ、みつこおば!あれ覚えてる?麦ぞうすい食べたいって私がわがまま言ってさ、おじとおばと二人で海に入って貝取りに行ってくれてさ、ちっとも取れなかったって残念がってたけど、おいしい雑炊でさ、私家に持って帰りたくて袋に詰めて持って帰ってさ、あれ東京で全部食べたんだよ(笑)」
みつこおばは、うんうん・・・・と、頷いた後でまた涙を拭いた。

「また泣いてる・・・(笑)」あんまり何度も泣くので笑うと
「じゃ、ゆっくりな・・・」と、仕事に戻って行った。

風呂からあがって、ホテルに帰ると言うとおばはカウンターから出てきて、私の首に手をまわしてギューっと抱きしめてくれた。さすがに私もこれには泣いた。みつこおばが元気なうちにまた来よう。こうして会いたいと思ってくれる人がいるのだ。

「おば・・・また来るよ。おばがこうして元気に働いているうちに、また絶対来る。待っててよ」
「待ってる・・・。食事会も出れなかったし、明日は婦人部総会があるしぃ・・・なかなか忙しくてね・・・ゆっくり話したかったよ」
「今度はゆっくりお茶しようね」

夕食は梁山泊。島の料理を食べさせてくれるところだ。島寿司、クサヤ、里芋コロッケ、海藻サラダ、島の味をたっぷりと楽しんで1日目が終わった。

長い長い一日。だけどこんなに嬉しくて素敵な日はなかった。
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by syu1212h | 2013-02-23 00:07 | 八丈島