月の見たモノ

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八丈島7

先生が亡くなって、junと八丈島にお墓参りに来た時のこと。
junが「ケーキ・・・フワフワの・・・真っ白いケーキが・・・」と、急に言い出して
「そうそう・・・あのケーキね・・・」と、私が懐かしがると「そのケーキ何?今ね、私の中にそのケーキが見えるんだけど、何これ?すごいフワフワのケーキ・・・・」

考えてみればjunはそのケーキの事は知らないのだ。しかしお墓の前に立ったら、ケーキが見えて、フワフワの食感までも感じている。junの頭の中にパッ・・・と、フラッシュバックするようにそのケーキが見えると言う。頭の中のそのケーキはjunの口の中に食感までも伝えてきて「なんだこれ?」と驚く。

きっと先生があの時のケーキの事、ありがとうって言ってるんだなと思った。

先生が絶賛してくれたおかげで、私はケーキを作れるってことに自分で気付いた。島の婦人会でお菓子教室を開催したり、島の子供たちに12種類のケーキバイキングをしたりして、やっと私は自分の中にあるものを見つけることができたのだ。

持っているのに気付かないもの、島の人たちは引き出してくれる。
「あなたにはこれがあるじゃない」と、肩を叩いてくれるのだ。

私なんて・・・と思った時には、こう思うようにする。
「まだわからないだけ。まだ気付かないだけ」自分の中の引き出しは思っているよりもたくさんあるのだ。
忙しさや、ものに溢れた生活の中で見失っているだけで、本当はちゃんと自分の中にある。

島にいると、そんなものが少し見えてきたりするのだ。


結局ゆっくり話せなかったすまこさんにはホテルから電話をした。
すまこさんの島言葉が早口過ぎて私は待ち合わせ場所を勘違いしてしまったのだ。
「待ってたのに!」「家に行ったんだけどもう居なかったじゃん!」
文句を言いながらも、会えなかった時間を潰していくように語り合った。

「よかったじゃん、話ができて。また来るだろう?」
「来るよ。夏に来たいし、春にも来たいよ」
「今度は~、ゆっくりお茶飲もうじゃ。またおじゃれ」

またおじゃれ。島の言葉の素敵な響きが耳に残る。
驚かせようと突然島に来たのはもう何年前だろう。
ばったり会った私の顔を見て「ヒロちゃん?ヒロちゃんだわぁ・・・・うそうそうそっ」そう言いながらポロポロと涙を流したすまこさん。本当に素敵な思い出ばかり。

島から帰ってきた私は、まだ心だけ島に残しているみたいな毎日だ。
今日もあの場所にはあの人たちが暮らしている。
そう思うだけで「私も頑張ろうっ!」と背筋が伸びる。


今度はね、島の人を東京の私の家に連れてきたい。下町の何でもない暮らしだけど、相撲部屋もあるよ。スカイツリーも見えるよ。ささやかな散歩道や、路地裏の植木散策も。私の淹れるエスプレッソと焼き菓子も用意しよう。スパイスたっぷりの手作りカレーも食べて欲しい。

あぁ・・・のりちゃんとさおちゃんと子供に戻ってディズニーランドにも行ってみたいよねぇ・・・。
だけどさ、ディズニーランドの花火だけは、毎晩私の家から見えるんだよ。屋上にサングリアを持って行ってさ、飲みながら花火を見ようよ。junの作るサングリアは最高においしいんだ。我が家にミッキーマウスはいないけど、エンターテーメントはないけど、下手くそな私のムーンウォークを披露するよ(笑)
きっとひっくり返って笑うだろうなぁ。そう思っただけで私は涙が出そうだ。

カラフル過ぎて落ち着かない私の部屋も、ヨボヨボの老犬ナナも、全部見せるから今度は私の家に来て欲しい。これが私の拾い集めた東京の暮らしの中での幸せのかけら。高価なものはひとつもないよ。だけどね、私の手の中で小さく輝く幸せのかけら。今度はそれを仲間に分けたい。

遠くない夢だ。これはきっと遠くない夢だと思う。きっと叶えてもらおう。

仲良しに配ったお土産はとらやカフェのパウンドケーキと、みんなでお揃いの鎌倉彫のお箸にした。
「食卓を一緒に囲むと仲良くなる」島の人の知恵。そうやって私も仲間に入れてもらってきた。

だから離れていても思い出してもらえるようにお揃いのお箸。毎日使いながら私も島を想っている。

あぁ・・・楽しかった。こんなに満たされた気持ちになるなんて。
今度はね、子供たちと体験ダイビングなんてやってみたいなと思ったりしている。
夏祭りでマイムマイムを踊りたいなと思ったりしている。

何よりも「絶対また島に行こう」と思っている。この続きを語れない今が寂しい。
またいつかこの続きが語れる日を楽しみにしておこう。

私たちの毎日はパズルの1ピースみたいに、それだけを見ていたら何ともない、何も魅力を感じないものだ。だけど、たくさん集まって、ちょっと離れて見てみたら・・・それは大きな思い出になっていたり、とても美しいものになっていたりする。

「どの時も、今につながるために必要だった時間」さおちゃんの言葉はまさにその通りだと思った。
毎日がハッピー♪そんな風にはなかなか暮らせないけど、あの時幸せだった。そして今も幸せだよねと笑い合える仲間がいる事を幸せだなと思う。

今回の閉校式の為に力を注いでくれたみなさんに心から感謝。ご苦労さまでした。

長い長い長文、お付き合いしてくれたあなたにも感謝です。ありがとうございました。



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by syu1212h | 2013-02-23 09:19 | 八丈島